89歳祖父がスマホやiPadを利用している話、導入方法や利用状況を書き残しておくと後で見返した時に興味深い文献になりそうな気がしてきたので、ブログに書き残したい気持ちになってきた
— 桐生あんず (@anzu_mmm) February 24, 2019
私の祖父は約5年前くらいからスマートフォンを使っており、今年の1月には89歳の誕生日のお祝いとしてiPadも持つようになった。
祖父がスマホを使っていることを話すと一部の人に驚かれたり面白がられることがあり、私自身としても高齢者がスマートフォンやタブレットを使いこなすようになっていく成長の様子を現在進行形で面白く眺めている。
それらの記録を今のうちにまとめておくと色々面白そうだったり、身内の高齢者にスマートフォンやタブレットをもたせようと考えている人の為になりそうなので書き残しておきます。
スマホ導入の流れ
細かいきっかけは覚えてないのだけれど、祖父は元々新しいもの好きだったので私や父親がスマホを使っているのを見て「スマホを使ってみたい」と2014年頃(当時85歳)に言い出したのが始まりだったと思う。*1
導入する前からガラケーを長年利用していて電話もメールも難なくできるくらいの操作スキルを持ち合わせていた。
たとえガラケーを使いこなすことはできたとしても、父親は「使いこなせるんだろうか?」と不安がっていてまずはdocomoが出している老人向けで簡易操作がウリとされていた「らくらくスマートフォン2(F-08E)」を買うことになった。
導入時から今までの利用状況
祖父はスマホを入手した時点では、らくらくスマホのUIが使い慣れていたガラケーに近く直感的なものだったので電話とメールと写真撮影・閲覧は初期の時点から使いこなしていた記憶がある。(スマホで撮った犬猫の写真をメールで送っててくれていた記憶がある)
祖父はスマホでの写真撮影がガラケー時代よりもやりやすくなったようで喜んでおり、スマホが自分のものになった満足感もあり楽しそうだった。
しかし、これだけだとガラケーとあまり変わらないということもあり、当時家族内ではLINEで連絡を取るようになっていたので、祖父のスマホにもLINEアプリをDLさせてみた。
父親はこの時も「メールや電話は前からやってるんだからできるだろうけど、LINEは使いこなせるのかな?」と不安がっていた気がするが祖父自身がLINEでのコミュニケーションに対しても好奇心を示してくれて、その場で使い方を実践的に教えたところLINEで連絡を送ってくれるようになった。
(「またじゃないよ」という文章は、当時祖父母宅で飼われていた猫「たま」の名前を打ち間違えて「また」になってしまったのだと思う……。)
祖父母宅用の家族内グループLINEも作り、もう一人の孫である私の従兄も招待してみんなで楽しんでいた。
そのほかにもLINEのプロフィールのアイコンの変え方、スタンプの送り方やLINE電話の使い方などを会うたび1つ1つ一緒に操作をしながら教えていったところ、自分でもスタンプを送ったりLINE電話をかけてくれるようになった。
スマホの操作を覚える中で、祖父は写真を撮って父や私に写真をLINEで送ったり自分でフォルダを管理して好きな時に手元で眺める体験がとても気に入ったようだった。
「これだけできればよいよな〜」と眺めていたところ、ある日帰省した時に次のステップアップとしてスマホからYahoo!の検索エンジンで気になった言葉を即座に調べるという行動を祖父はいつの間にか身につけていてとてもびっくりした。
Wikipediaで戦時中・戦後の出来事をWikipediaで読むのが面白くてよく読み漁っているらしい。
一緒にスマホの画面を見ていると、検索結果に出てきたYahoo!知恵袋掲示板の回答一覧なども閲覧していて、変な影響を受けていないか心配で、遠回りに「ネットの情報を鵜呑みにするのは危ないから気をつけてね」と伝えたりもしていた。
結局のところ、知恵袋のアレな文献を見つけると「今読んでいる文章は偏ってるやつだから参考にならないな」とコメントしていてちょっと一安心した。
検索機能も使いこなすようになった次は、リマインダー機能を触り出し病院の予定や老人会・俳句会の予定をカレンダーに書き込むようになった。これはさすがに父親が教えたのだろうと思って確認をとってみたところ、まさかの自分で覚えてアラーム機能も使っているようだった。(余談だが、父親は今でも紙の手帳派だ)
そして、どんな予定でもくまなく書き込んでいるらしくめっちゃ偉いとなった。
結果的に、祖父は4年ぐらいの期間で以下の操作ができるようになっていた。
・電話
・メール
・連絡帳の管理・閲覧
・LINE(LINE電話でのコールとテキスト・写真・スタンプの送信のみ。友達登録やアルバムの管理などの細かい機能は使いこなしていない)
・Yahoo!検索で調べ物
・スケジュール管理(ちなみにホワイトボードにも予定を書き込んで二重でリマインドしている)
85-89歳の期間でここまで使いこなせるようになったのは凄い良い話だなと思う一方で、一つちょっと深刻な問題が起きた。
スマホ依存である。
四六時中Yahoo!検索で気になる言葉を調べているらしく、耳が遠いのも重なって祖母が話しかけても2,3度重ねて声をかけないと返事しなくなってしまっているようだ。
そのようなディスコミュニケーションが喧嘩の種になっているらしい。老人もスマホ依存になるんですね。
その様子に父も半分呆れて、「妖怪スマホじじい」という不名誉なあだ名を付けられるようになってしまった。
それでも、ここまで使いこなしているのは凄いなと思うし、私や父親のスマホを借りてGoogle Earthで海外の親戚が住んでいる場所や自分の近所の実際の写真を眺めて目を輝かせているのを見ると、今のスマホよりももっと色々なことができるタブレットを導入して、元気な内にもっと遊ばせてみてはどうかと父親に度々相談するようになった。
父親は「今のスマホはらくらくスマホだからできていることだろうし、さすがにタブレットは使えないだろう」と1年ぐらいは首を縦に振ることはなかったのだが、祖父の89歳の誕生日のお祝いの話が出るようになった頃、加齢現象によりいつまで元気でいるか分からない不安感も漂ってき始めたのもあったせいか、現実的に購入を検討し始めたのだった。
祖父の89歳の誕生日にiPadを買ってあげる話が出ています
— 桐生あんず (@anzu_mmm) January 2, 2019
ただ、祖父は今のスマホに強い愛着を持っていたのでスマホからタブレットに機種変することはやめて、長野の家(私の実家)のタブレットをセルラーモデルからWi-Fi機に変更して祖父母の家で実家タブレットの既存の電話番号を使うことになった。
ちょっとややこしい。*2
iPad導入 そこで気付いたこと・よかったこと
そして約3ヶ月前(2019/1)、祖父母の家にiPadが導入された。
とりあえず、以下のことを教えていこうと当時は意気込みしていた。
・iPadでもLINEを利用できるようにする
・iPadで写真撮影・管理をできるようにする
・アマゾンプライムで映画を観れるようにする
・YouTubeで動画を見れるようにする
・Google Mapを使いこなせるようにする
・iPadに標準機能で付いているカレンダーアプリやリマインドアプリを使えるようにする
・dマガジンで本を読めるようにする
私や両親が普段使う機能の中で便利かつ操作も割りかしできるだろうと思う機能を選んだつもりだった。
しかし、祖父にiPadのカレンダー機能やアマゾンプライムの使い方をどんどん教えていく中で、祖父の様子がどうもおかしいことに気付いた。楽しくなさそうなのだ。
確かに「便利ですごい」のだけれど、祖父から見たら複雑なUIで情報量がありすぎて追い付けないんだ、これ。しかも、1タップで済む操作じゃないものが多く覚えるのにも時間がかかるし、そのコストを考えるなら慣れきった簡易操作スマホでできることをやったほうが祖父の満足度が高い体験にたどり着くのだ。
それに気付いて、無意識的に自分のエゴを祖父に押し付けようとしていたのではと心の中でちょっと反省した。
とりあえず自分目線で便利アプリを色々教えるのはやめよう、となりその日はiPadでLINEアカウントを新規作成し、手持ちのスマホと平行して使えるようにした。
これから楽しく使っていけるかなあとちょっと気になっていたところ、ちょっと予想外な朗報が届いた。
今まで電子機器にあまり興味を示さなかった祖母が、iPadの大きな画面を使ってLINEで届く実家の犬の動画を楽しんで見るようになったとのことだった。
どうやら、一般的な老人たちは小さい文字や画面を見るのは苦手だけれど「大きな画面で写真や動画が見れる」という体験を好む傾向にあることに気付いてきた。祖父もiPadで写真や動画を撮り方を覚えられるようになってから、iPadの方のLINEアカウントで写真や動画を送ってくれるようになった。
結果的に祖父母たちはiPadで以下のことをやるようになった。
・◎ iPadでもLINEを利用できるようにする(写真・動画の送信・閲覧とビデオ通話)
・◎ iPadで写真撮影・管理をできるようにする
・アマゾンプライムで映画を観れるようにする
・YouTubeで動画を見れるようにする
・△ Google Mapを使いこなせるようにする (私や父がいる時だと触れるレベル)
・iPadに標準機能で付いているカレンダーアプリやリマインドアプリを使えるようにする
・○ dマガジンで本を読めるようにする(昔から読んでいる週刊誌を読めて良いとのこと)
結果として、タブレットは祖父母が興味のあるコンテンツ媒体を大きめな画面で高画質に表示できるメリットを活かした使い方をすれば良いんだなとなった。
なので、祖父が日常的にスマホを使っている状態は維持したままで祖母がiPadで大画面コンテンツを楽しむといった体験の拡張を行う流れになった。
現在
最近あったすごく良い話です。以下の話は良い話なせいかなんとなく敬語体になりました。
従兄の結婚式を足が悪くて欠席している祖母にタブレットの操作を覚えさせたことで、LINEで結婚式の動画を逐一送信したりビデオ通話で中継して新婦さんのお母さんとご挨拶できたりで便利
— 桐生あんず (@anzu_mmm) April 7, 2019
従兄の結婚式が先日あったのですが、足が悪くて東京の会場までいくことができない祖母をオンラインでリモート参加させる形式にして結婚式を楽しんでもらおうという計画を立てて実行しました。
さすがに常時ビデオ接続は難しかったのでやりませんでしたが、結婚式の場面の動画を逐一送るようにして、新郎新婦がやってきてくれた時や新婦さんのお母さんがご挨拶にやってきた時に、ビデオ通話をつないで会話するようにして楽しんでもらいました。
祖母目線だといきなり新婦さんのお母さんが登場したように見えてびっくりした顔になってたり、向こうの画面で祖母と一緒にいる老人たちが喋りまくっていてはちゃめちゃな感じになっていましたが、大体よかったと思います。
あと、カメラマンの人が気を遣ってくれて、祖父がiPadを持った姿勢でビデオ通話で画面に顔が写り込んでいる祖母がいる状態の時の写真を撮ってくれました。(文章にすると説明が難しい)
父親がその様子を見て「なんか遺影みたいになってる」とコメントしていて、めちゃくちゃ不謹慎なんですが確かにそう見えるわ……となってしまい少し笑ってしまった。
しかし、結婚式に出席することができた祖父もさすがにかなりの高齢のため帰り際は凄く疲れてそうで心配になってしまいました。
こういうのを見ると、もし自分が結婚式をやる未来があったとしたら今回の結婚式で祖母に見せたように、リモートで見せる感じの方が良いなとなりました。
祖父母が存命な内に結婚できる未来があるのかがそもそも謎で胃が痛い所ですが……。
まとめ
じわじわと家族内IT改革を進めていったおかげで、最終的に先日の結婚式のような楽しい使い方もできたと思っているのでまぁまぁ良かったなと思っています。
だけど、ここまでうまくやれた一番の理由は祖父が好奇心旺盛で新しいもの好きだったこと、知らないことでもどんどん触っていき使いこなせる器用さがあったからなのではとずっと考えています。
脚注1にも書いてますが、祖父はテレビが最初に出た時に真っ先に買うタイプの人だったらしいので、元々そういう性格の人なんだろうなと思います。これは身内ゆえのひいき目かもですが、時代が違えば良いITエンジニアになっていたかもしれません。
さすがにプログラミングを教えることは難しそうなので(おばあちゃんがアプリ開発をしている記事を見たこともありますが……)、スマホ・タブレットをより楽しく使ってもらうお手伝いをすることが自分ができる一番のジジババ孝行な気がしています。
ただし、張り切りすぎて「自分が」便利と思い込んでいることを無理に押し付けて体験をつまらなくさせることをしないように気をつけることと、祖父母たちが電子機器を使って何を効率化したいのかを1歩下がった位置で見極めて、困っている時に手助けをしたり、彼らにとって良さそうな使い方をアドバイスする立ち振る舞いを意識するのが良いのでは、と感じています。
そうやって今後も楽しく元気にインターネットをしてほしいなと思います。
そんな感じのお話でした。ではでは。